日銀、政策金利1.25%へ 「金利のある時代」に不動産オーナーが考えるべきこと ―BOJ Raises Policy Rate to 1.25% — What Real Estate Owners and Investors Should Consider Now

2026年9月18日、日本銀行は金融政策決定会合において、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げることを決定しました。

政策金利は31年ぶりの高水準となります。

さらに、そのわずか2日前の9月16日には、米連邦準備制度理事会(FRB)も政策金利を0.25%引き上げ、3.75~4.00%としました。

日本と米国がともに利上げに動くなか、長く低金利を前提としてきた日本の不動産市場も、改めて「金利のある時代」を意識する局面に入っています。

では、今回の金融政策の変化を、不動産オーナーはどのように考えればよいのでしょうか。

日銀、政策金利を1.25%へ

今回の日銀の利上げは、政策委員9名のうち7名が賛成、2名が反対しました。

植田総裁は会見で、最近の賃金データが強く、中長期的なインフレ期待も上昇しているとの認識を示しました。

そして今回、特に注目したいのが、金融政策の「局面が変わった」との説明です。

これまで日銀は、2%を下回っていた基調的な物価上昇率を引き上げることを政策上の大きな課題としてきました。

しかし今後は、基調的な物価上昇率が2%を上回るリスクについても注意する必要があるとの認識が示されています。

長期間続いた「デフレと低金利」を前提とした日本経済から、物価と金利が動く経済へ。

不動産を取り巻く環境についても、前提そのものを見直す必要が出てきています。

1.25%が「終点」とは限らない

不動産オーナーにとって重要なのは、政策金利が1.25%になったことだけではありません。

今後さらに金利が上昇する可能性があることです。

植田総裁は今後の利上げについて、あらかじめ一定の間隔を決めているわけではなく、経済・物価データを確認しながら各会合で判断する考えを示しました。

物価動向によっては、連続利上げや0.5%幅の利上げについても選択肢から排除しない姿勢です。

一方で、急激な利上げによって金融環境が過度に引き締まり、資産価格などに大きな調整が生じることにも注意する考えを示しています。

つまり、今後の金利を正確に予測することは困難です。

だからこそ不動産経営では、「次の政策金利を当てる」ことよりも、複数の金利水準を想定して準備しておくことが重要になります。

米国も約3年ぶりに利上げ

米国では9月16日、FRBが政策金利を0.25%引き上げ、3.75~4.00%としました。

FRBによる利上げは2023年7月以来、約3年ぶりです。

米国でもインフレが依然として高く、物価安定を重視する姿勢が改めて示されています。

日本だけでなく米国も再び利上げに動いたことを考えると、「金利はいずれすぐ低い水準へ戻る」と当然の前提にすることは難しくなっています。

不動産オーナーが今、確認しておきたいこと

今回の利上げを受けて、不動産オーナーがすぐに売却を考える必要があるわけではありません。

しかし、これまで以上に「自分の物件の数字」を確認しておく必要があります。

① 借入金利が上がった場合、年間いくら負担が増えるのか

最初に確認したいのは、非常にシンプルです。

「金利が0.5%、1%上昇したら、年間の支払利息はいくら増えるのか」

例えば借入残高5億円の場合、単純計算では、

金利+0.5%で年間約250万円、

+1.0%で年間約500万円の負担増です。

借入残高3億円なら、+1%で年間約300万円。

1億円なら約100万円です。

重要なのは、その増加分を現在のキャッシュフローで吸収できるかどうかです。

年間500万円の利益が出ている物件と、年間2,000万円の利益が出ている物件では、同じ5億円の借入でも金利上昇への耐性はまったく異なります。

② 「変動金利」だけではなく固定金利の終了時期も確認する

「うちは固定金利だから大丈夫」と考えているオーナーも、一度契約内容を確認しておく必要があります。

固定期間が終了した後、どのような金利になるのか。

固定期間はいつ終了するのか。

その時点の借入残高はいくらなのか。

ここが重要です。

現在の支払金利だけを見るのではなく、今後3~5年間の金利条件まで確認しておく必要があります。

③ 借換え時に「同じ金額を借りられる」とは限らない

金利上昇局面で注意したいのは、金利そのものだけではありません。

金融機関の融資判断です。

金利が上昇すると、物件から得られる収益に対する年間返済額の負担が大きくなります。

その結果、金融機関が求める返済余力を満たしにくくなれば、借換え時に、

「金利が上がる」

だけではなく、

「借入期間が短くなる」

「追加の自己資金を求められる」

「希望額まで借りられない」

といった可能性も考える必要があります。

特に借入残高が大きく、近い将来に借換えを迎える物件については、早めに金融機関と相談しておくことが重要です。

④ 修繕費・管理費・保険料も同時に上昇している

今回の問題は金利だけではありません。

不動産経営では、建築費、人件費、設備費、修繕費、管理費、保険料など、さまざまなコストが上昇しています。

築年数が進んだ一棟マンションやビルでは、

外壁改修、

屋上防水、

エレベーター、

給排水設備、

空調設備、

消防設備など、

まとまった修繕費が発生する可能性があります。

金利負担が増えるタイミングと大規模修繕が重なると、キャッシュフローへの影響はさらに大きくなります。

「年間収支は黒字だから大丈夫」ではなく、今後5年間程度の修繕計画まで含めて考えることが重要です。

⑤ 賃料を上げる余地があるか

一方、金利や物価が上昇する時代だからこそ、収入側を見直すことも重要です。

現在の賃料は周辺相場と比較して適正でしょうか。

長期間入居しているため、相場より低い賃料になっている部屋はないでしょうか。

空室をリフォームすることで賃料を引き上げる余地はないでしょうか。

駐車場、看板、自動販売機、屋上、倉庫など、十分に活用されていないスペースはないでしょうか。

不動産経営では、コストを削減するだけでなく、NOIそのものを改善することも重要です。

金利上昇局面では、物件の「収益改善力」がこれまで以上に問われることになります。

⑥ 売却価格にも金利は影響する

収益不動産の価格は、買主がどの程度の利回りを求めるかによって大きく変わります。

金利が上昇すれば、買主側の借入コストも上昇します。

その結果、投資家が求める利回りが上昇すれば、同じNOIでも不動産価格には下押し圧力がかかります。

例えば年間NOIが3,000万円の物件の場合、

NOI利回り4%なら単純計算で7億5,000万円、

5%なら6億円です。

わずか1%の利回り差でも、理論上の価格差は1億5,000万円になります。

もちろん実際の不動産価格は立地、築年数、土地価格、将来性、融資環境など多くの要素によって決まるため、この計算だけで価格が決まるわけではありません。

しかし、「金利の変化が買主の投資判断を通じて売却価格にも影響する」という点は、不動産オーナーとして意識しておく必要があります。

⑦ 「売らないリスク」も考える

不動産オーナーにとって難しいのは、「いつ売るか」です。

価格が高いうちに売った方がいいのか。

まだ賃料収入があるので持ち続けるべきなのか。

金利が落ち着くまで待つべきなのか。

正解は物件によって異なります。

ただし、売却しない場合にもリスクがあります。

建物は毎年築年数が進みます。

将来的には修繕費が増えます。

融資期間も短くなります。

相続が発生する可能性もあります。

そして市場の買主が求める利回りが変わる可能性もあります。

「今売るリスク」と「持ち続けるリスク」の両方を比較することが重要です。

⑧ 相続・資産承継を予定している物件は特に確認を

長期保有している不動産については、金利だけではなく相続・資産承継の視点も必要です。

例えば、

築年数が進んでいる、

借入が残っている、

共有になる可能性がある、

将来的に大規模修繕が必要、

相続人が不動産経営を希望していない、

といった物件では、「そのまま相続すること」が必ずしも最適とは限りません。

金利環境が変わるタイミングだからこそ、保有資産全体を整理し、

残す不動産、

売却する不動産、

組み替える不動産、

を考えておくことも一つの選択肢です。

「売るか、持つか」の前に、数字を並べてみる

今回の利上げを受けて、すぐに不動産を売却する必要はありません。

逆に、「これまで大丈夫だったから、これからも大丈夫」と考えることにも注意が必要です。

まず確認したいのは、

現在の年間NOI、

年間返済額、

借入残高、

現在の金利、

固定・変動の別、

借換え時期、

今後5年間の修繕費、

現在の想定売却価格、

売却した場合の手取り額です。

そして、

現状の金利、

+0.5%、

+1.0%、

という複数のケースでキャッシュフローを比較してみる。

それだけでも、その物件を今後どのように保有すべきかがかなり見えやすくなります。

2027年以降を見据えた資産戦略へ

日本では長い間、極めて低い金利が続いてきました。

そのため、「借りられるだけ借りて長期保有する」という戦略が成立しやすい環境でもありました。

しかし、その前提は変わり始めています。

これから重要になるのは、単純に不動産を「持つ」「売る」という判断ではありません。

収益力の高い物件は残す。

賃料改善が可能な物件は収益力を高める。

借入条件を改善できる物件は金融機関と交渉する。

将来の修繕負担が大きい物件は売却も検討する。

そして、売却した資金をどこに再配分するのかまで考える。

不動産単体ではなく、資産全体で考えることが重要になってきます。

今回の日銀による政策金利1.25%への引き上げは、ただちに不動産市場が大きく変わることを意味するものではありません。

しかし、長く続いた「低金利を前提に不動産を保有する時代」から、

「金利・収益・修繕・借換え・出口まで考えて不動産を保有する時代」

へ移りつつあることは、意識しておく必要があります。

金利がさらに上昇してから考えるのではなく、まだ余裕がある段階で一度、自分の不動産と借入の状況を数字で確認してみる。

2027年以降の資産戦略を考えるうえで、今はその良いタイミングなのではないでしょうか。


※本稿は2026年9月18日時点の公表情報および報道をもとに作成しています。金融政策、金利、為替、不動産価格等の将来の動向を予測・保証するものではありません。

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